接触確認アプリ「COCOA」について以前ツイートしました。
繰り返しになるけど、COCOAのAndroid版をネイティブで作り直したいので、誰か知ってる人につないで欲しい。
— ARIYAMA Keiji (@keiji_ariyama) February 3, 2021
ツイートした後もGitHubのCOCOAのリポジトリにコメントしたり、知り合いに「COCOAやりたい」「COCOAやりたい」と言い続けたりした結果、このたび厚生労働省の技術参与として正式にCOCOAに携わることになりました。
すること
オープンソースコミュニティとの関わりについては、すでに政府CIO補佐官の東さんと関さんが取り組みを始めています。ぼくは二人を手伝いつつ、Issueとして報告があった内容の再現確認をしたり、Pull RequestでExposure Notification APIを使ったテストが必要なところを担当したりと、もう少しコードに踏み込んだ部分も担当する予定です。
また、オープンソースコミュニティとCOCOAの開発を担当しているチームとの知見共有を推進する役割も担う予定です。
わかりやすく言えば、オープンソースコミュニティに対しては、COCOAの開発担当チームがどういう意図でコードを書いたのか可能な限り共有する。逆に、オープンソースコミュニティの知見をCOCOAの開発担当チームに共有することで、開発担当するチームの負荷を下げつつCOCOAを改善する取り組みをする、といういわば橋渡しの役割を担えればと思っています。
しないこと
参与は基本的に非常勤です。現職(有限会社シーリス)は続けます。
先日公開された関さんのエントリ「オープンプロセスによって、COCOAの信頼を再構築する」で、COCOAは現在のXamarin版をより良いものにしていくという方針が示されています。したがって、AndroidネイティブのCOCOAを作ることは現時点でのぼくの作業予定にはありません。
ぼくの書いたコードがCOCOAのコードベースに直接マージされることもありません。ぼくは厚生労働省の技術参与であってCOCOAの開発担当チームのメンバーではありません。 ぼくが書いたコードはPull Requestの形でみなさんの目に触れて、あくまでオープンソースコミュニティからとして開発担当チームに適宜渡ることになります。
着任から5日経って
3月11日付けで着任したばかりですが、顔合わせを兼ねた打ち合わせをしたり、求めに応じて技術的な見解を述べたり、さっそく仕事を始めています。 開発担当のチームとの打ち合わせでは、ぼくがGitHubに送っているPull Requestについてフィードバックをもらったりもしています(このエントリの公開後Pull Requestを更新する予定です)。
ぼくは大阪に自宅があり、オフィスにも週に一度、行くか行かないかという状況です。COCOAに関してリモートでの執務体制は整っていて、これまでのところ、ウェブブラウザーだけでコミュニケーションが完結しているので安心しています。
さいごに
これは一番大事なことですが、今回、なぜ有山圭二が関わることになったかと言えば、これは縁としか言いようがありません。
ぼくは2007年11月のAndroidが発表された当時からAndroidアプリ開発に取り組んできました。EclipseからAndroid Studioへの移行や、Android Architecture Componentsの登場、プログラマーとしてのキャリアのほとんどをAndroidとともに歩んできました。しかしiOSアプリの開発や、Xamarinのようなマルチプラットフォームフレームワークついて十分な経験があるわけではありません。
またCOCOA改善のモチベーションが高い人たちはたくさんいます。 #COCOAボランティアデバッグ(現#openCACAO)の取り組みをされている方々は、以前からCOCOAの改善につながる情報収集に取り組んできました。zaruudonさんは、接触通知が届かない問題の原因をいち早く報告しています。
ぼくはと言えば、Androidでバックグラウンドタスクがうまく動かない問題を解決するPull Request #30をしていますが、Pull RequestとIssueのコメントを見ていただければわかるように、ほとんど全部がtmurakamiさんのアドバイスで成り立っているもので、そもそもぼくの能力によるものではありません。
この事実は、ぼくがCOCOAの改善にあたって銀の弾丸に なり得ない ことを示す一方で、ぼくがオープンソースコミュニティの力を信じる根拠にもなっています。
やりたいという人が手を動かすと、それを応援する人が現れる。 幸いにして、COCOAにはオープンソースコミュニティの土壌があります。これはCOCOAがコントリビューションの受け入れに対して熱心でなかった時期でも、それでも改善につなげたいと活動を続けていた人たちがいたことからも明らかです。
そして3月2日のコントリビューションポリシー変更以降、多くのIssueとPull Requestが寄せられています。
COCOAの改善のため、これからもオープンソースコミュニティにみなさんの力を貸してください。 ぼくもその一員として実際に手を動かし、開発を担当しているチームと連携して、COCOAの改善に努めます。
よろしくおねがいします。